ハーネスとは「馬具」のこと
AIエージェントは力の強い馬。放っておくと、頼んでいない相手にメールを送ったり、消してはいけないファイルを消したりする。手綱と装具(ハーネス)を付けて、決めた道を安全に走らせる仕組みづくりが「ハーネスエンジニアリング」。AIを賢くするより、AIが間違えても事故にならない形を作ることが仕事の中心になる。
ハーネスの6つの部品
| 部品 | たとえ | 中身 | Claude での実体 |
|---|---|---|---|
| ① 指示書 | 新人に渡す「職場のルールブック」 | この仕事の目的、置き場所、やってはいけないこと、言葉づかい | プロジェクトごとの CLAUDE.md |
| ② スキル | 業務ごとの手順書 | 「この仕事はこの順で、この資料を見て、この形で仕上げる」 | スキル(合言葉で呼び出す) |
| ③ 権限 | 渡す鍵の範囲 | 読んでよい場所・書いてよい場所・使ってよい道具 | 許可設定(ファイル・コマンド・外部サービスごと) |
| ④ 関所(承認) | 判子が要る書類 | 送信・公開・削除・支払いの前は、必ず人が確認する | 承認の確認画面、フック(自動チェック) |
| ⑤ 記憶 | 引き継ぎノート | 前回の失敗・決まったこと・好みを次回に持ち越す | メモリ、決定ログ、STATUS |
| ⑥ 点検 | 定期監査 | ルールと実態がずれていないか、定期的に確かめる | 週次の自動点検(定期実行) |
事故から生まれたルール(講師の実例)
ハーネスは机上で考えるより、小さな事故を1つずつルールに変えていくと強くなる。
| 起きたこと | ルールにしたこと | 部品 |
|---|---|---|
| AIを使うための鍵(APIキー)が公開の場所に出て、約6万8千円の不正請求 | 鍵はコードにもチャットにも書かない。鍵は専用の金庫に集め、プログラムは金庫から読む | ①③ |
| AIが「不要」と判断した経理書類を消してしまった | AIの判断で消さない。疑わしいものは「退避フォルダ」へ移し、最後は人が消す | ③④ |
| クライアントのブログを、確認前に公開しかけた | 公開ボタンはクライアント本人が押す。AIは下書きまで | ④ |
| AIが古い知識で製品名を「訂正」して間違えた | 製品名・料金は、直す前に必ずWebで確認する | ①⑤ |
| 同じ説明を何度もさせられた | 一度決めたことは記憶に残し、蒸し返さない | ⑤ |
作り方の手順
仕事を1つ選ぶ毎回同じ手順で、失敗しても取り返しがつくもの
指示書を書く目的・置き場所・禁止事項を1枚に。長くしない
関所を決める「外に出る操作」と「消す操作」は必ず人が押す
スキルにする手順を言葉にし、合言葉で呼べるようにする
点検を回す週1回、ルールと実態のずれを確かめ、事故はルールに変える
任せるほど、関所が大事になる
AIエージェントが自分で動くようになるほど、「権限のはみ出し」が起きやすくなる。便利さと事故は同じ入口から来る。最初に決めるのは「何をさせるか」ではなく「どこで止めるか」。
関連資料
- E2 プロジェクトのフォルダ構成と管理 … 指示書と記憶の置き場所
- E3 ローカルLLMと「情報を外に出さない」設計
- C3 事例:この資料ライブラリの自動化・スキル化 … ハーネスの実物
- D1 信号機ルール