ゲームのセーブポイントのように、仕事のフォルダの「ある時点の状態」を、何度でも保存できる仕組み。あとから「昨日の状態に戻す」「いつ、何を変えたか見る」ができる。そして、保存したものをインターネット上の「貸金庫」(GitHub)にも預けておけば、パソコンが壊れても、別のパソコンでも、続きができる。
難しい操作は要らない。ターミナル(黒い画面)は、開かなくてよい。この資料は、Claudeに頼むか、画面のボタンだけで進められる形で書いてある。E1で作った仕事のフォルダを、ここで「保存できる状態」にする。
1. なぜ、AIエージェントにGitが要るのか
AIが壊しても、戻せる
AIは、ファイルを書き換えたり、消したりする。保存した時点には、いつでも戻れる。安心して任せられる。
「いつ・何を」が分かる
AIが何を変えたかを、履歴で確認できる。引き継ぎや、あとからの確認にも使える。
バックアップになる
貸金庫(GitHub)に預けておけば、パソコンの故障や紛失から守れる。別のPCにも、そのまま移せる。
並行して作業できる
Claudeのデスクトップアプリで、複数のセッションを、それぞれ独立した作業コピーで動かすには、Gitが必要(公式)。
Claude Code にも、AIの編集を取り消す機能(チェックポイント)がある。ただし戻せるのは、AIが直接編集したファイルだけ。コマンドで消したファイルや、外部への操作は戻せず、保存期間も限られる(約30日)。長く残す履歴は、Gitで持つ(公式の説明)。
2. 3つの段階:まずは①だけでもよい
| 段階 | できること | 用意するもの | 目安 | ターミナル |
|---|---|---|---|---|
| ① PCの中に保存する | 昨日の状態に戻せる。履歴が残る | Git | 約15分 | 不要(Claudeに頼む) |
| ② 貸金庫(GitHub)に預ける | バックアップ。別のPCで続きができる | GitHubのアカウント、GitHub Desktop | +約20分 | 不要(ボタンで操作) |
| ③ 「保存して、金庫に送って」と頼めるようにする | 終わりの合言葉に、保存と送信まで含められる | GitHub CLI(gh)でのログイン | +約10分 | 任意(Claudeに頼めば、操作は案内される) |
おすすめは、①と②。③は、慣れてから。勉強会・サロンでは、①②を実際にやる。
3. 準備の手順
手順1:Gitが入っているか確認する(①)
ClaudeのデスクトップアプリのCodeタブで(まだなら、先に A4:契約と最初の設定)、仕事のフォルダを選び、次のように頼む。
| パソコン | 入れ方(Gitの公式の案内) |
|---|---|
| Mac | ほとんどのMacには、最初から入っている(Claudeの公式ドキュメントの説明)。入っていないときは、Macが「開発者ツールをインストールしますか」と案内を出すので、「インストール」を押して、終わるまで待つ(Gitの公式が、いちばん簡単な方法として案内している) |
| Windows | Gitの公式サイト(git-scm.com)から、「Git for Windows」のインストーラーをダウンロードして実行する。迷ったら、設定は初期のまま「Next」で進めてよい |
手順2:最初の設定(名前とメールアドレス)
Gitは、保存のたびに「誰が保存したか」を記録する。最初に、名前とメールアドレスを1回だけ設定する。
Gitの最初の設定は、git config --global user.name "名前" と git config --global user.email メールアドレス の2つ(Gitの公式の手順)。自分で打ちたい人は、この2行をターミナルに入れてもよい。名前とメールは、保存の履歴に載る。だから、保存先は必ず非公開にする(後述)。
手順3:仕事のフォルダを、Gitで保存できる状態にする(①)
先に、「入れてはいけないもの」を決める。鍵・パスワード・実データ・個人情報は、保存の対象から外す(D1)。この除外リストが「.gitignore」というファイル。
| .gitignore に入れる例 | 理由 |
|---|---|
.env .env.* *.key *.pem | 鍵・パスワード。入れると、金庫から漏れる |
data/ | 実データ(個人情報・決算書など) |
.DS_Store Thumbs.db | パソコンが自動で作る不要なファイル |
| 動画・大きな画像のフォルダ | 大きなファイルは、金庫に向かない |
手順4:最初の保存(①)
これで、「セーブポイント」が1つできた。以後は、「保存して」と頼むだけ。保存の説明(コミットメッセージ)は、日本語でよい。「何を変えたか」を一言で書く。
手順5:貸金庫(GitHub)を用意する(②)
「公開」にすると、世界中の誰でも中身を見られる。仕事のフォルダは、すべて非公開。預ける前に、画面の「非公開(Private)」の選択を、毎回、目で確認する(ボタンの名前は、アプリの版で変わることがある)。
預けたあとは、GitHub Desktop の画面に、変更されたファイルの一覧が出る。保存は「Commit」ボタン、金庫に送るのは「Push origin」ボタン。まずは、この2つのボタンだけ覚えればよい。
手順6(任意):Claudeに「保存して、金庫に送って」と頼めるようにする(③)
慣れたら、Claudeが金庫への送信までやれるようにできる。GitHubの公式コマンドラインツール「gh」を入れて、1回だけログインする。
- ログインは、ブラウザが自動で開き、GitHubのアカウントで認証する形(GitHubの公式の説明)。認証の情報は、パソコンの安全な保管場所に残るので、以後は、毎回のログインは要らない。
- パスワードやトークンを、チャットに書かない。ログインは、必ずブラウザの画面で行う。
4. 毎日の使い方:終わりの合言葉に入れる
E1の「終わりの合言葉」に、保存を入れる。これで、毎回の作業の最後に、現在地・決めたこと・保存が、まとめて残る。
(③まで設定した人は、最後に「金庫にも送ってください」を足す。②だけの人は、GitHub Desktop の「Push origin」を押す。)
5. 戻したいとき:「見る」→「戻す」の順で
いきなり戻さない。先に、何が変わるかを見てから、戻す。
| やりたいこと | Claudeへの頼み方 |
|---|---|
| AIがさっき直した所を、取り消したい | 「さっきの変更を、すべて取り消してください。取り消す前に、どのファイルがどう変わるか教えてください」 |
| 昨日の状態を、見たい | 「保存の履歴を、新しい順に10件、日付と説明で見せてください」→「〇日の保存のときの、〔ファイル名〕の中身を見せてください」(見るだけで、何も変えない) |
| 昨日の状態に、戻したい | 「いまの状態を、先に保存してください」→「〇日の保存の状態に戻したい。戻す前に、変わるファイルの一覧を見せてください。私が確認するまで、実行しないでください」 |
| 消してしまったファイルを、復活したい | 「保存の履歴から、〔ファイル名〕を探して、元の場所に復元してください」 |
GitHub Desktop の「History」タブでも、保存の履歴を一覧で見られる。
6. Claudeの確認画面で、見るべき言葉
Claudeがコマンドを実行する前に、実行する内容が確認画面に出る(最初の設定の「確認あり」のとき)。コマンドの意味は、読めなくてよい。ただし、次の言葉があったら、承認せず、「これは何をするものですか?本当に必要ですか?」と聞く。
| 確認画面の言葉 | 意味 | どうする |
|---|---|---|
rm、delete、clean | ファイルを消す | 消す対象を聞く。消さずに、退避フォルダへ(E1) |
--force、-f | 確認を飛ばして、強引に実行する | 原則、承認しない。理由を聞く |
reset --hard、checkout .、restore . | 保存していない変更を、捨てて戻す | 捨てられる内容を、先に確認する |
push と --force の組み合わせ | 金庫の履歴を、書き換える | 承認しない |
public(公開) | 金庫を、世界に公開する | 承認しない。必ず非公開 |
7. 守るルール(E2の「関所」)
- 金庫は、必ず非公開。
- 鍵・パスワード・個人情報・実データは、保存しない(.gitignore で除外。鍵の置き場所は E6)。間違えて入れてしまったら、履歴から消すだけでは足りない。その鍵を、すぐ無効にして、新しいものに入れ替える(講師の約6万8千円の事故の教訓。E2)。
- 履歴を書き換える・消す操作は、AIに任せない(上の表)。迷ったら、人が判断する。
- 保存の前に、中身を見る。「何が保存の対象になっているか」の一覧を、毎回、軽く眺める。
- 大きなファイル(動画など)は、入れない。
8. 用語のやさしい説明
| 用語 | やさしく言うと |
|---|---|
| Git | 変更履歴を残す仕組み(セーブ機能)。自分のパソコンの中で動く |
| GitHub | Gitで保存したものを預ける、インターネット上の貸金庫 |
| リポジトリ | Gitで管理しているフォルダ(保存の履歴つきの仕事フォルダ) |
| コミット(保存) | セーブポイントを1つ作ること。説明を添える |
| プッシュ(金庫に送る) | 保存したものを、GitHubに預けること |
| プル(金庫から取る) | GitHubにある最新の状態を、自分のパソコンに取り込むこと |
| ブランチ | 履歴の枝分かれ。最初は、1本(main)だけで十分 |
| ワークツリー | 同じ仕事フォルダの、独立した作業コピー。複数のセッションを並行して動かすとき |
| .gitignore | 「保存の対象にしないもの」の除外リスト |
9. ターミナルを使う場面のまとめ
| 場面 | ターミナル | 代わりの方法 |
|---|---|---|
| Gitの確認・設定・保存・履歴の確認・戻す | 不要 | Claudeに頼む |
| 金庫に預ける、変更を送る | 不要 | GitHub Desktop のボタン |
| Claudeに、金庫への送信まで頼む(③) | 任意 | Claudeに、ghの導入とログインを案内してもらう(ログインはブラウザ) |
ターミナルの操作に慣れた人向けの確認方法として、git --version(Gitが入っているか)、git status(いまの状態)、git log --oneline(保存の履歴)がある。
- 設定ファイル・手順書(スキル)・記憶のファイルを、非公開の金庫に、毎日自動で保存している。
- 保存の対象は「入れるものだけを許可する」形の除外リストにして、鍵や会話の記録が入らないようにしている。
- 作業の最後は「締めます」の一言で、記録・保存・バックアップまで、まとめて行う。
- Git はもともと開発者の道具だが、「保存して」「金庫に送って」と頼むだけで、非開発者でも使える。
10. はじめての日のチェックリスト
| ☐ | 確認すること |
|---|---|
| ☐ | Gitが使える状態になった(Claudeに確認してもらった) |
| ☐ | 名前とメールアドレスを設定した |
| ☐ | .gitignore を作り、鍵・実データが除外されている |
| ☐ | 最初の保存ができた。履歴に1件出ている |
| ☐ | GitHubのアカウントを作った(二段階認証つき) |
| ☐ | 金庫に預けた。非公開(Private)になっている |
| ☐ | 終わりの合言葉に、保存を入れた |
| ☐ | 「見る→戻す」の順を、1回練習した(ファイルを1つ直して、取り消してもらう) |
関連資料
- E1 はじめてのAIエージェント:フォルダ構成と管理 … 仕事のフォルダの作り方と、終わりの合言葉
- E2 ハーネスエンジニアリング入門 … 関所と事故から生まれたルール
- D1 信号機ルール … 入れてよい情報・いけない情報