AIエージェントは、開いたフォルダの中を「自分の職場」として働く。資料があちこちに散らばっていると、AIも人も迷う。最初にやるのは、頼み方の工夫ではなく「場所づくり」。1つの仕事=1つのフォルダにして、その中に「指示書」「現在地」「決めたこと」を置くと、別の日・別の人・別のPCでも、同じ品質で続きができる。
このページ(E1)は「置き場所と進め方(どこに・どうやって)」。先に、ここで、手を動かして、フォルダを作る。続けてE2 ハーネスエンジニアリング入門(考え方と6つの部品:なぜ・何を)を読むと、「なぜ、そうするのか」が、腑に落ちる。勉強会・サロンでは、E1(手を動かす)→ E2(考え方)の順に使う。
1. 先に知っておく、2つの制約
このページのルールは、すべて次の2つから来ている(Claude Code の公式ドキュメントと、Anthropic の技術解説による)。
① AIは、毎回「白紙」から始まる
新しく会話を始めるたびに、AIは前回のことを覚えていない。前回の続きを引き継ぐ唯一の方法は、ファイルに書いておくこと。だから「指示書」「現在地」「決定ログ」が要る。
② 作業机(文脈)は小さく、いっぱいになるほど鈍る
会話・読んだ資料・実行結果は、すべて「作業机」に載る。机がいっぱいになると、前の指示を忘れたり、間違いが増える(「context rot」と呼ばれる)。だから「整理して、小さく保つ」「話題ごとに区切る」ことが、最も大事な習慣になる。
2. どこに置くか:クラウド同期フォルダは、避ける
仕事のフォルダ(AIに開かせるフォルダ)は、パソコンの中(ローカル)に置く。Google ドライブ・iCloud Drive・OneDrive・Dropbox のようなクラウド同期のフォルダの中には、置かないのが、おすすめ。
| 置き場所 | 作業フォルダ | ひとこと |
|---|---|---|
| パソコンの中 Mac: ~/ProjectsWindows: C:\Users\名前\Projects | ◎ | ホーム(ユーザー)フォルダの直下に、Projects を作る。「デスクトップ」「書類」の中には、作らない(下の注意) |
| Google ドライブ(Drive for desktop) | × | 資料の保管・共有には、向いている |
| iCloud Drive | × | Macの「デスクトップと書類フォルダ」の同期がオンだと、デスクトップ・書類の中身が iCloud Drive に保存される(Apple 公式) |
| OneDrive | × | 「フォルダーのバックアップ」をオンにしていると、デスクトップ・ドキュメントなどが、同期の対象になる(設定による) |
| Dropbox など | × | 同じ理由 |
なぜ、避けるのか(5つの理由)
| 理由 | 起きること |
|---|---|
| ① Gitの管理ファイルが壊れる | 同期サービスが、同時に変わったファイルを、「main 2」のような番号つきの複製にしてしまい、fatal: bad object というエラーで、保存・送信ができなくなる報告がある(iCloud Drive での事例)。直すのは、難しい |
| ② 小さなファイルが大量で、同期が止まる | Gitや、AIが作る一時ファイルは、数千個になる。OneDrive が応答しなくなった報告があり、OpenAI の Codex でも、「クラウド同期フォルダでの作業に、警告を出してほしい」という課題が記録されている |
| ③ 「オンラインのみ」のファイル | OneDrive の「オンラインのみ」のファイルは、開くたびにダウンロードされる(Microsoft 公式)。Google ドライブの「ストリーミング」も、ファイルは主にクラウドにあり、開いたときにダウンロードされる(Google 公式)。AIが、大量のファイルを読むと、遅くなる・失敗する |
| ④ 鍵や実データが、自動でクラウドに上がる | 知らないうちに、クラウドにコピーされる(D1・E6) |
| ⑤ 同時に書き換えて、衝突する | AIが、多数のファイルを、短時間に書き換える。同期と衝突し、複製ファイルが増える |
「必ず壊れる」わけではない。個人のメモ用途で、問題なく使っている人もいる。ただし、壊れたときに直すのは難しく、非開発者には、避けるのが安全。
最善の提案:3つの役割に分ける
| やりたいこと | やり方 |
|---|---|
| クラウドにある資料を、AIに読ませたい | 必要なものを、ローカルの inputs/ にコピーしてから読ませる(コピーも、AIに頼める) |
| できた成果物を、お客様・社内に共有したい | 完成版を、クラウドの共有フォルダに、コピーする(仕事のフォルダは、そのまま、ローカルに置く) |
| 複数のパソコンで、同じ仕事を続けたい | クラウド同期ではなく、GitHubで同期する(保存して送る/取り込む。E4) |
| 会社として、資料をAIの根拠にしたい | 共有ドライブを資料室にして、Gemini Notebook に入れる(W2)。ここは、同期ではなく、資料の置き場所 |
- Git を使わない、資料中心のフォルダに限る(
.gitを、同期の中に置かない)。 - Google ドライブは、「ストリーミング」ではなく、「ミラーリング」(ファイルを、常に、パソコンとクラウドの両方に持つ)にする。OneDrive は、そのフォルダを「常にこのデバイスに保持」にする。
- AIに、大量のファイルを作らせない。鍵・実データを置かない。
自分のフォルダが、同期の中にないかを、AIに確認してもらう(コピーして使う):
作業フォルダ(Projects)は、パソコンの中に置き、iCloud の同期の対象外にしている。バックアップは、GitHub の非公開の金庫。お客様の書類の保管・共有は、Google ドライブ。「作業場所」と「保管・共有」を分けるのが、基本の考え方。
3. 何の単位で分けるか:顧客ごと? アプリごと? 案件ごと?
「1仕事=1フォルダ」の、「仕事」を、どう切るか。正解は、事業ごとに違う。ここでは、決めるための「基準」と「型」を示す。そのうえで、自分の事業に合わせて決める(AIと一緒に決める方法は、後半)。
切り方は、4つ
| 切り方 | 向く仕事 | メリット | 注意 |
|---|---|---|---|
| 顧客ごと | 継続して関わる(顧問・保守・士業・コンサル) | 顧客共通のルール・用語・担当者・守秘を、1か所に書ける | 案件が混ざる。顧客の中を、案件で、さらに分ける |
| 案件ごと | 期限と成果物がある(見積〜納品、申請、イベント) | 終わったら、まるごと退避(_archive)できる | 同じ顧客の案件が、散らばらないように、顧客の下にまとめる |
| アプリごと | つくって、育てていく(社内アプリ、顧客向けアプリ) | Git の単位=アプリ。履歴・共有・引き継ぎが、アプリごとにきれい | 顧客が複数のアプリを持つなら、顧客の下に、アプリを置く |
| 業務ごと | 自社の仕事を良くする(月次の請求チェック、問い合わせ返信など) | 「F1 の棚卸し」の単位と、そろう | 部署が違うと、見せてよい範囲が違う。部門で束ねる |
迷ったら:5つの質問(上から順に)
| # | 質問 | 答えの使い方 |
|---|---|---|
| 1 | AIに見せてよい範囲が、同じか?(守秘の境界。D1) | 最優先。別の顧客・別の部署・信号の色が違う情報は、同じフォルダに入れない(AIが取り違える・漏らす) |
| 2 | AIに渡す、資料・ルール・言葉が、同じか? | 同じなら、同じフォルダ。違うなら、分ける |
| 3 | 引き継ぐ相手(担当者)が、同じか? | 担当が変わる単位で、切ると、引き継ぎが楽 |
| 4 | 終わりがあるか? | 案件=あり(終わったら退避)。アプリ・業務=なし(育てる) |
| 5 | 契約・請求の単位は? | 顧客か案件の単位と、そろえると、あとで整理しやすい |
指示書は、3層に重ねられる(親のフォルダの指示書も、効く)
Claude Code は、作業フォルダの CLAUDE.md だけでなく、その上のフォルダの CLAUDE.md も、連結して読む(公式)。これを使うと、「顧客共通のルール」を、1回だけ書ける。
- AIに開かせるのは、いちばん下(案件・アプリ・業務)のフォルダ。顧客フォルダを開くと、同じ顧客の別の案件の資料も、AIの範囲に入る。
- 顧客共通のルールは、顧客フォルダの CLAUDE.md に1回だけ書き、各案件には、案件だけの内容を書く。
事業のタイプ別:型の例
| 事業のタイプ | おすすめの切り方 | フォルダの例 |
|---|---|---|
| 顧問・士業・コンサル(顧客に継続して関わる) | 顧客 → 案件。顧客共通の指示書+案件ごとの指示書 | clients/顧客略称/2026-案件名/ |
| 受託でアプリをつくる | 顧客 → アプリ。Git の単位は、アプリ | clients/顧客略称/アプリ名/ |
| 自社のアプリを育てる | アプリごと | apps/アプリ名/ |
| 店舗・製造・事務(自社の業務を良くする) | 業務ごと。部署で束ねる | work/経理/月次請求チェック/ |
| セミナー・発信・学習 | テーマごと/開催ごと | seminar/2026-10-17-主催名/ |
Git・GitHub との関係
- 1つのフォルダ(Gitの単位)=共有・引き継ぎの単位。顧客Aと顧客Bを、同じ保存先(リポジトリ)に入れない。
- お客様と共有する場合は、案件・アプリの単位で、共有する(顧客フォルダ全体を共有しない)。
名前の付け方
- 顧客:半角の英小文字とハイフンの略称(例:
tanaka-sekkei)。会社名の変更があっても、フォルダ名は、変えない。 - 案件:
西暦-内容(例:2026-monthly-check)。アプリ:アプリの名前。 - 日本語の説明は、フォルダの中の文書(
運用ルール.mdなど)に書く。
自分の事業に合わせて、決める手順
AIに頼んで、決める(コピーして使う)
一般論ではなく、自分の事業の言葉で、AIに質問してもらいながら決める。
いまのフォルダが散らかっているとき(提案だけ。移動はしない)
顧客共通の指示書を作る
AIが、別の案件・別のお客様の話を、持ち出す/同じ説明を、何度もしている/探しものが多い/1つのフォルダで、共有する相手が違う。→ 分け方を、見直すタイミング。フォルダの移動は、Git の履歴が切れるので、早めに。
4. 基本の構成:1仕事=1フォルダ
「仕事のフォルダ」は、1か所にまとめる(デスクトップや書類フォルダにばらまかない)。名前は半角の英小文字とハイフンにすると、扱いやすい。
最初はこれだけ(軽量版)
慣れたら足す(フル版)
これは便利さであり、安全装置でもある。フォルダの外は、AIに触らせない(権限の範囲)。別の仕事の資料が同じフォルダにあると、AIがそちらを参照して取り違える。2つの仕事を、1つのフォルダで進めない。
5. 各ファイルの役割(E2の6部品との対応)
| E2の部品 | 置き場所 | 役割 | 書き方のコツ | 更新のタイミング |
|---|---|---|---|---|
| ① 指示書 | CLAUDE.md | AIが毎回最初に読む。この仕事の目的、置き場所、禁止事項 | 短く。目安は200行以内。「消してもAIが間違えない行」は消す(E2の4) | 同じ訂正を2度したとき |
| ② スキル | .claude/skills/ | この仕事の手順書。呼んだときだけ読まれる | 手順は指示書ではなく、スキルへ(F1の手順書) | 手順が固まったとき |
| ③ 権限 | .claude/settings.json、フォルダの範囲、.gitignore | どこを読み、どこに書き、何を実行してよいか | 最初は確認あり。安全と分かった操作だけ許可リストへ | 新しい道具を使うとき |
| ④ 関所 | 承認の設定、outputs/、_archive/ | 送信・公開・削除・支払いの前に、人が確認する | 「書き込み先は outputs だけ」「消さずに _archive へ」と決めておく | 外に出る操作を足すとき |
| ⑤ 記憶 | STATUS.md、docs/決定ログ.md | 現在地と、決めたことの理由。次の会話に持ち越す | STATUS は「済んだこと/次の一手/待っていること」だけ。決定ログは、日付・決めたこと・理由・却下した案 | 毎回の作業の最後 |
| ⑥ 点検 | RAID.md、週1回の点検 | ルールと実態のずれ、残っている課題を確かめる | R(リスク)A(前提)I(課題)D(依存)で分け、閉じたら消す | 週1回 |
6. 最初の30分:手を動かして、フォルダを作る
勉強会・サロンでは、ここを実際にやる。まず、小さくて、失敗しても取り返しがつく仕事を1つ選ぶ(例:毎月の請求書チェック、問い合わせメールの下書き)。
手順2:AIに「聞き取って」もらう(コピーして使う)
手順3:現在地ファイルを作る
終わるときの合言葉(毎回)
「変更を保存してください」は、Git(E4)の準備ができていれば、そのまま動く。まだなら、この一文を除いて使う。
7. 仕事の進め方の型
公式ドキュメントと、長時間働くエージェントの設計(Anthropicの技術解説)に共通する、うまくいく進め方。
この資料は、Claudeのデスクトップアプリ(Codeタブ)の画面のボタンと、Claudeへの頼み方だけで進められるように書いてある。ターミナル(黒い画面)は開かなくてよい。コマンドは、慣れた人向けの「参考」として、小さく添えるだけにする。
① 先に調べて、計画してから、実行する
いきなり実行させると、「間違った問題を解く」ことがある。ただし、1文で説明できるほど小さな変更(誤字の修正など)は、計画を飛ばしてよい。
② 「完成の基準」を先に渡す
AIは「できたように見えた」ところで止まる。確かめる方法が無いと、人が毎回、間違いを見つける係になる。次のように、確認の手段を一緒に渡す。
| 曖昧な頼み方 | 完成の基準を付けた頼み方 |
|---|---|
| 請求書をチェックして | 請求書PDF 30件を読み、金額・税率・日付を表にして。取引先リストと一致しないものを一覧にして。最後に、件数の合計が合っているか確かめて、結果を見せて |
| メールを書いて | お客様への見積案内メールを下書きして。条件:です・ます調、200字以内、金額は見積書の数字をそのまま写す。書いたあと、条件を1つずつ満たしているか確認して |
- 「できました」という言葉ではなく、確認した結果(数字・実行結果・画面)を見せて、と頼む。証拠を見るほうが速い。
- 作った本人(AI)が、そのまま採点しない。別の会話・別のAIに、「抜けがないか」を見てもらうと、思い込みが入りにくい(作る人と見る人を分ける)。ただし、見る係に「問題を探して」と頼むと、必ず何か指摘する。正確さと要件に関わる指摘だけ、と範囲を決める。
③ 1度に1つ。終わったら確認して、保存する
長い仕事を一気に頼むと、AIは「全部できた」と早く宣言したり、途中で作業机がいっぱいになって中途半端に終わる、という失敗が起きやすい。Anthropicの設計では、次の工夫で防いでいる。
| 起きること | 対策 |
|---|---|
| 「全部できた」と早く宣言する | やることの一覧(チェックリスト)を最初に作る。人が確認してから、チェックを付ける |
| 確認が足りないのに、完了にする | 確認が終わったものだけ、完了にする |
| 前の作業の続きが分からなくなる | 進捗のメモ(STATUS)と、変更の保存を、1つ終わるごとに残す |
| やり方が毎回変わる | 起動や実行の手順を、1か所(スキルやスクリプト)にまとめる |
④ 会話は区切る:1つの仕事=1つのセッション
Claudeのデスクトップアプリでは、1つの会話を「セッション」と呼ぶ。左のサイドバーに一覧が並び、いつでも開き直せる。仕事が変わったら、新しいセッションにする(サイドバーの「+ 新しいセッション」。Macは Cmd+N、Windowsは Ctrl+N)。
| 状況 | やること |
|---|---|
| 別の仕事の話に移る | 新しいセッションを始める。関係ない話が混ざると、精度が落ちる |
| 同じことを2回直しても直らない | 新しいセッションで、学んだことを入れた、より具体的な頼み方で、やり直す。直し続けるより、早い |
| 会話が長くなった・今日は終わりにする | 「終わりの合言葉」(6章)で、STATUS.md と決定ログに書いてもらう。次は、新しいセッションで、STATUS を読ませて始める |
| 続きを別の日にやる | サイドバーのセッション一覧から開き直す。または、新しいセッションで、STATUS.md を読ませる。セッションの名前は、上のタイトルをクリックして、分かりやすく付け直せる |
| 調べものが大量になる | 調べる役を「別の担当(サブエージェント)」に任せるよう頼む。結果の要約だけが戻るので、作業机が汚れない |
講師自身は、会話の要約(/compact)や、会話の消去(/clear)のコマンドは、ほとんど使っていない。作業の最後に、「締めます」の一言で、STATUS・決定ログ・保存まで書き出し、次は新しいセッションで、続きから始める。覚えておくことは、会話の中ではなく、ファイルの中に置く。これなら、コマンドを覚えなくても、毎回、同じ品質で続けられる。
参考(慣れた人向け):会話を要約して縮める /compact、会話を消して新しく始める /clear、前の会話を選んで再開する --resume。ただし、要約すると、会話の中だけで伝えた指示は失われやすい。残したいことは、ファイルに書く。
⑤ いつでも戻せるようにする
- 変更は、確認してから受け入れる:最初は「確認あり(Manual)」のモードにしておくと、Claudeがファイルを書き換える前に、何がどう変わるか(差分)を画面で見て、「承認」か「却下」を選べる。受け入れたあとも、変更のあった行数(例「+12 −1」)をクリックすると、変更の一覧を、あとから見直せる。
- 取り消したいとき:「さっきの変更を、取り消してください」と頼む。ただし、AIの巻き戻し機能で戻せるのは、AIが直接編集したファイルだけ。コマンドで消したものや、外部への操作は戻せない。バックアップの代わりにはならない。
- 変更履歴(Git)が本命:フォルダごと履歴で管理すると、「昨日の状態に戻す」ができる。難しい操作は不要で、Claudeに「保存して」と頼めばよい。導入と設定は E4 Gitの導入と設定(ターミナルなしで進められる)。
- 消さずに退避する:不要に見えるファイルも、
_archiveへ移すだけにする。消すのは、最後に人が決める(E2の事故の実例)。
⑥ 同じフォルダで、2つのセッションを同時に動かさない
同じファイルを、2つのセッションが同時に書き換えると、衝突する。並行して進めるなら、作業用のコピー(ワークツリー)か、別のフォルダに分ける。デスクトップアプリでは、新しいセッションを作るときに、ブランチ名の横の「worktree」を選ぶと、そのセッション専用の独立したコピーで動く(Gitが必要。→ E4)。初めは「1フォルダ・1セッション」で十分。
8. 安全な置き場所の設計(E2の「権限」「関所」とつなぐ)
| 置き場所 | AIの権限 | 信号 |
|---|---|---|
inputs/ | 読むだけ | 〜 公開情報/匿名化した資料 |
outputs/ | 書いてよい(下書きまで)。送信・公開は人 | |
_archive/ | 移すだけ。消さない | — |
data/(実データ) | 必要なときだけ、人が許可。保存・共有の対象から外す | 個人情報・決算書など(D1) |
| 鍵・パスワード | ファイルに書かない。専用の金庫(Vault)に置く(→ E6)。AIに、鍵のファイルを読ませない設定も入れる |
- 「必ず守らせたい」ことは、指示書に書くだけでなく、仕組みで止める:指示書はAIへの「お願い」で、強制ではない。権限の設定や、決まった場面で自動で動くチェック(フック)で止める(E2の4-1)。
- 最初は「確認あり(Manual)」で始める:入力欄の横のモード選択で選べる。Claudeがファイルを書き換えたり、コマンドを実行したりする前に、確認が出る。慣れて、安全と分かった操作だけ、許可する範囲を広げる。確認ボタンを、読まずに押し続けるようになったら、設定を見直すサイン。
9. 名前と整理のルール
- 日付と版を名前に入れる:「最新版(修正)2.docx」は、すぐ嘘になる(→ B2)。
- 日本語のファイル名もよい:「運用ルール.md」「決定ログ.md」は、見た瞬間に中身が分かる。勉強会で説明なしに伝わる、という利点もある。
- 真実源は1か所:同じ内容を2か所に書かない。指示書には「詳しくは docs/運用ルール.md」と案内だけを書く。
- 他のAIツールと共用するなら:多くのAIツール(20以上、OpenAI の Codex など)は、「AGENTS.md」という共通の指示書を読む。Claude は、CLAUDE.md が無いときだけ AGENTS.md を読む。両方使うときは、CLAUDE.md の中から取り込む。
10. フォルダを「育てる」:週1回の点検
最初から完璧なフォルダは作れない。失敗を1つずつ、ファイルに書き足して育てる。
| こんなとき | やること |
|---|---|
| 同じ間違いを、2度された | 指示書に1行足す(具体的に、守れたか確かめられる形で) |
| 同じ説明を、また入力した | 指示書か決定ログに書く |
| 指示書が長くなってきた | 手順はスキルへ、一部の場所だけのルールは近くのファイルへ(E2の4-5) |
| AIが、指示を守らなくなった | 指示書が長すぎて埋もれていないか、指示が食い違っていないかを見る。1行だけ強調してもよい |
11. よくある失敗と、直し方
何でも1つの会話でやる
別の話が混ざり、作業机が散らかる。話題ごとに会話を新しくする。
直し続ける
2回直して直らなければ、新しい会話で、具体的な頼み方からやり直す。
指示書が長すぎる
半分は読まれない。「消しても間違えない行」は消す。手順はスキルへ。
確認の手段が無い
「もっともらしい」結果をそのまま使ってしまう。完成の基準と、結果の証拠を求める。
範囲を決めずに調べさせる
大量の資料を読み、作業机がいっぱいになる。範囲を絞るか、別の担当に任せる。
混ぜる
2つの仕事を1つのフォルダで進めると、別の資料を参照して取り違える。1仕事1フォルダ。
鍵を書いてしまう
共有やバックアップで漏れる。鍵は金庫に置き、保存の対象から外す。
「最新版」だらけ
日付と版を名前に入れる。古い版は _archive へ。
12. はじめての日のチェックリスト
| ☐ | 確認すること |
|---|---|
| ☐ | 仕事を1つ選んだ(小さく、失敗しても取り返しがつく) |
| ☐ | 1仕事=1フォルダを作り、inputs・outputs・_archive を用意した |
| ☐ | AIに質問させて、CLAUDE.md を作り、200行以内で、人が読み直した |
| ☐ | STATUS.md を作った(済んだこと/次の一手/待っていること) |
| ☐ | 送信・公開・削除は人が押す、と決めた(書き込み先は outputs だけ) |
| ☐ | 鍵や実データを、フォルダに置かない、または保存の対象から外した |
| ☐ | 1件だけ試して、完成の基準で確かめた |
| ☐ | 変更履歴(Git)の準備ができた(→ E4)。まだなら、次回までの宿題にする |
| ☐ | 終わるときに、STATUS を更新し、変更を保存した |
| ☐ | 次回の最初にやることを、STATUS の先頭に書いた |
- E1(60分):まず、置き場所(2章)と、分け方(3章)を、自分の事業で決める。そして、6章の「最初の30分」を、全員で実際にやる。各自の仕事を1つ選び、フォルダ・指示書・STATUS を作り、1件だけ試す。
- E2(30分):手を動かしたあとで、「なぜ、そうするのか」。ハーネスとは何か、6つの部品、mdファイルの役割と行数の限界、事故から生まれたルール。
- E4(事前または当日に別枠で):Git と GitHub の導入と設定(①②を実際にやる)。ターミナルは使わない。
- 宿題:1週間、終わりの合言葉で STATUS を更新する。翌回に、「2度された間違い」を指示書に足した例を持ち寄る。
関連資料
- E2 ハーネスエンジニアリング入門 … 考え方と6つの部品。mdファイルの行数の限界
- E4 Gitの導入と設定 … 変更履歴という「保存の金庫」。ターミナルなしで進められる
- F1 業務の棚卸しと仕組み化 … 手順書の書き方(スキルの材料)
- B2 データ管理の型 … 資料の置き方・名付け方
- D1 信号機ルール … 入れてよい情報・いけない情報
- G1 1日集中合宿 / G2 2日集中合宿
出典(2026年10月確認)
- Best practices for Claude Code(Anthropic 公式):文脈の制約、完成の基準、探索→計画→実装、会話の区切り方、巻き戻し、並行作業、よくある失敗
- How Claude remembers your project(Anthropic 公式):CLAUDE.md・自動メモリ・AGENTS.md の扱い
- Effective harnesses for long-running agents(Anthropic):進捗ファイル、機能リスト、変更の保存、1度に1つ、確認してから完了にする
- Effective context engineering for AI agents(Anthropic):文脈は有限の資源、外部ノート、サブエージェント、必要なときに取り込む
- AGENTS.md(オープンな指示書の形式)