このページは「考え方」(なぜ・何を)。E1で、仕事のフォルダ・指示書・現在地を、実際に作ってから読むと、各部品が、自分のフォルダのどこにあたるか、すぐ分かる。
AIエージェントは力の強い馬。放っておくと、頼んでいない相手にメールを送ったり、消してはいけないファイルを消したりする。手綱と装具(ハーネス)を付けて、決めた道を安全に走らせる仕組みづくりが「ハーネスエンジニアリング」。AIを賢くするより、AIが間違えても事故にならない形を作ることが仕事の中心になる。
1. まず1枚の絵:エンジンと車体
AIモデル=エンジン
ChatGPT・Gemini・Claude の「頭脳」にあたる部分。とても高性能だが、エンジンだけでは走れない。
ハーネス=車体まわり一式
ハンドル・ブレーキ・ナビ・シートベルト。エンジンを「目的地まで安全に走れる車」にする仕組み。私たちが普段さわっているのは、実はこちら。
NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは2026年5月、エージェントは言語モデルの上で直接動くのではなく、その手前に挟まる「安全に管理されたソフトウェア層」の上で動くと説明した。この層が担うのは、考えて道具を使う手順の繰り返し、外部システムの呼び出し、モデルの使い分け、記憶と文脈の管理、そして暴走の停止や行動の記録。
質問して答えをもらうだけなら、ハーネスは薄くてよい。しかし「AIが自分でメールを送る・データを更新する・複数のシステムをまたいで作業する」ようになると、何を許すか・どこで止めるか・何を記録するかの設計が要る。同じモデルでも、ハーネスの出来で「使い物になるか」が決まる。
2. なぜ今、大事なのか
- モデルの差が縮まった:どの会社のAIも、一定以上に賢い。差がつくのは「どう仕事につなぐか」の側になった。
- 人間の統制は、機械の速度に間に合わない:人の担当者なら、権限・承認・監査で管理できた。AIは人間よりずっと速く複数のシステムを動かすので、別の設計が要る。
- 失敗の多くはモデルではなくハーネス側にある:権限が広すぎた、資料が古かった、止める条件がなかった。「もっと賢いAIにすれば解決する」とは限らない。
3. ハーネスの6つの部品
| 部品 | たとえ | 中身 | Claude での実体 | これが無いと |
|---|---|---|---|---|
| ① 指示書 | 新人に渡す「職場のルールブック」 | この仕事の目的、置き場所、やってはいけないこと、言葉づかい | プロジェクトごとの CLAUDE.md | 毎回、同じ説明をする。人によって結果が違う |
| ② スキル | 業務ごとの手順書 | 「この仕事はこの順で、この資料を見て、この形で仕上げる」 | スキル(合言葉で呼び出す) | 毎回ゼロから頼む。品質がばらつく |
| ③ 権限 | 渡す鍵の範囲 | 読んでよい場所・書いてよい場所・使ってよい道具 | 許可設定(ファイル・コマンド・外部サービスごと) | 触ってはいけないものに触れてしまう |
| ④ 関所(承認) | 判子が要る書類 | 送信・公開・削除・支払いの前は、必ず人が確認する | 承認の確認画面、フック(自動チェック) | 取り返しのつかない操作が、人の知らないうちに実行される |
| ⑤ 記憶 | 引き継ぎノート | 前回の失敗・決まったこと・好みを次回に持ち越す | メモリ、決定ログ、STATUS | 同じ失敗と説明を、何度も繰り返す |
| ⑥ 点検 | 定期監査 | ルールと実態がずれていないか、定期的に確かめる | 週次の自動点検(定期実行) | ルールが古くなり、いつの間にか守られなくなる |
① 指示書=CLAUDE.md/② スキル=.claude/skills//③ 権限=.claude/settings.jsonとフォルダの範囲/④ 関所=承認の設定と、書き込み先(outputs/)・退避(_archive/)/⑤ 記憶=STATUS.mdと決定ログ.md/⑥ 点検=RAID.mdと週1回の点検。実際の作り方と進め方は E1 はじめてのAIエージェント:フォルダ構成と管理。
4. mdファイル:ハーネスの本体は「文章」
Claude Code のハーネスは、プログラムではなく、人が読める普通の文章ファイル(Markdown=「.md」)で作る部分が大きい。AIは会話のたびに「白紙」から始まるので、前回の学びと、守ってほしいルールを持ち越す手段は、mdファイルしかない。ここを理解すると、プログラムが書けなくても、AIの振る舞いを設計できる。
4-1 3種類のmdファイルと、それぞれの役割
| ファイル | 誰が書く | いつ読まれる | 一言でいうと |
|---|---|---|---|
| CLAUDE.md(指示書) | 人 | セッションの開始時に、毎回 | 「このルールで働け」 |
| メモリ(MEMORY.md + 個別のメモ) | Claude が自分で書く | 目次(MEMORY.md)は毎回。個別のメモは必要になったとき | 「前に教わったこと」 |
| SKILL.md(スキル) | 人(Claude と一緒に作ってもよい) | 呼んだとき、または必要と判断されたとき | 「この仕事のやり方」 |
CLAUDE.md は、Claude に渡される文脈で、設定のように強制されるものではない。曖昧な指示や、食い違う指示は、守られないことがある。必ず守らせたいこと(送信・削除・公開の前の確認など)は、md に書くだけでなく、権限の設定やフック(決まった場面で自動で動くチェック)で、仕組みとして止める(→ ④関所)。
4-2 置き場所=効く範囲
| 置き場所 | 効く範囲 | 向く内容 |
|---|---|---|
| 組織の管理者が置く場所(OSごとに決まった場所) | その組織のすべての利用者 | 会社の規程、セキュリティの方針 |
~/.claude/CLAUDE.md | 自分の全セッション | 言語、秘密情報のルール、共通の作法 |
案件のフォルダ/CLAUDE.md(または .claude/CLAUDE.md) | その案件のセッション。共有できる | 案件の目的、置き場所、ルール、依頼例 |
CLAUDE.local.md | その案件・自分だけ(共有しない) | 個人の作業メモ |
| サブフォルダの CLAUDE.md | そのフォルダのファイルを読んだときだけ | 部分的なルール |
.claude/rules/ のmd | パスを指定すると、該当するファイルのときだけ。指定なしは毎回 | テーマごとに分けたルール |
- 上書きではなく、連結される:見つかったすべての CLAUDE.md が、文脈に並べて読み込まれる。広い範囲のものが先、作業フォルダに近いものが後。食い違うときは、近いほうが優先されやすい。
- どこで開いたかで、読まれるものが決まる:案件のフォルダで開けば、その案件の CLAUDE.md とメモリが載る。全案件に効かせたいことは、全体用に昇格させる。
4-3 行数・サイズの限界(2026年10月時点・公式の数字)
| 対象 | 限界・目安 | 超えるとどうなるか |
|---|---|---|
| CLAUDE.md(1ファイル) | 200行以内が目安。それより長くしない | 文脈を多く使い、守られにくくなる。長いと、起動時などに警告が出る。4MiBを超えると、そもそも読み込まれない |
| メモリの目次(MEMORY.md) | 起動時に読まれるのは、先頭200行、または25KBの、先に来たほうまで | それ以降は読み込まれない(書き込み自体はできる)。1記憶1行、詳細は個別のメモに分ける |
| メモリの個別ファイル | 起動時には読まれない | 必要になったとき、Claude が読みに行く |
| SKILL.md(本体) | 500行以内が目安。詳細は別ファイルへ | 呼ぶたびに全部が文脈に載るので、長いほど毎回のコストが増える |
| スキルの説明文(description) | 説明文+使う場面の合計で1,536文字まで(一覧に載る分) | それ以降は一覧で切れる。「いつ使うか」を先頭に書く |
| @で読み込む別ファイル(import) | 入れ子は最大4段まで | 整理には役立つが、読み込む量は減らない(起動時にすべて読む) |
| .claude/rules/(パス指定なし) | 起動時に毎回読まれる(CLAUDE.md と同じ扱い) | 長くしたくなったら、パス指定で「該当するファイルのときだけ」にする |
行数の限界は「機械的に切られる線」ではなく、「長いほど守られにくい」という目安(CLAUDE.md)と、「それ以降は読まれない」という線(メモリの目次)の2種類がある。長い文章の中ほどが見落とされやすいことは、研究でも知られている(→ ①)。
4-4 使い方の原則
- 書くタイミング:「同じ間違いを2度された」「前回と同じ訂正を、また入力した」「新しく来た人にも同じ説明が要る」。毎回説明し直していることを、文章にする。
- 書くこと:毎回必要な事実(ルール、置き場所、言葉づかい、「必ずこうする」)。書かないこと:複数の手順(→ スキルへ)、一部の場所でしか要らないこと(→ サブフォルダやパス指定へ)、ファイルを見れば分かること(古くなって嘘になる)。
- 確かめられる具体さで書く:「ちゃんと書いて」は守りようがない。次のように、守れたかが分かる書き方にする。
| 曖昧な書き方 | 確かめられる書き方 |
|---|---|
| 丁寧な文章で | 「です・ます調」で、1文は60字以内 |
| 資料は整理して置く | 見積書は「営業/見積書」に、ファイル名は「会社名_日付_v番号」で保存する |
| メールは気をつけて | メールは下書きまで。送信はしない |
- 見出しと箇条書きで整理する:長い文章より、構造のあるほうが、AIも読みやすい。
- 食い違う指示を残さない:矛盾があると、AIはどちらかを適当に選ぶ。追記を重ねたら、定期的に読み直して、古い指示や矛盾を消す。点検は、Claudeに頼めばよい(「CLAUDE.md を点検して。古い指示・存在しないファイルへの言及・食い違いを、一覧で報告して。直す前に、私に確認して」)。Claude Code には、同じ点検をする機能(
/doctor prompt-audit)もある(新しいバージョンのみ)。 - 人間向けのメモは、コメントで書ける:行頭のHTMLコメント(
<!-- ... -->)は、AIに読み込まれず、文脈を使わない。 - 会話の中だけで伝えた指示は、消える:長い会話を要約(コンパクト)したとき、案件の直下の CLAUDE.md は読み直されて残るが、会話の中で言っただけの指示は失われる。残したいことは、ファイルに書く。
- 他のAIツールとの共用:他のツールが使う指示書(AGENTS.md)がある場合、CLAUDE.md が無いときだけ読まれる。両方使うなら、CLAUDE.md の中から取り込む。
4-5 長くなったときの直し方(優先順位)
4-6 確認のしかた:コマンドより、Claudeへの頼み方
ターミナルが苦手でも大丈夫。やりたいことを、そのままClaudeに頼めばよい。コマンド(右の列)は、慣れた人向けの参考で、デスクトップアプリでは、使えないものもある。
| やりたいこと | Claudeへの頼み方 | (参考)コマンド |
|---|---|---|
| 読み込まれている指示書・メモリの確認。「書いたのに効かない」ときは、まずこれ | 「いま読み込んでいる指示書とメモリを、ファイル名と行数で一覧にして」 | /context、/memory |
| 指示書のひな形を作る | 「この仕事の CLAUDE.md を作って。書く前に、私に質問して」(コードの無い案件は、先に議論してから作るほうがよい) | /init |
| 指示書の点検 | 「CLAUDE.md を点検して。長すぎる所、古い所、食い違いを報告して。直す前に確認して」 | /doctor |
| 覚えさせたいことを、ファイルに残す | 「これを CLAUDE.md に追記して」(自動メモリに残したいときは「覚えておいて」) | /memory |
- 全体用の CLAUDE.md は約70行、案件用は約40行。毎回読まれるものは、短く保つ。
- 詳しいルールは別ファイル(真実源)に置き、指示書には「どこを見るか」だけを書く。
- スキルの一覧は指示書に書かない。各スキルの説明文が自動で読まれるので、二重管理を避ける。
- メモリには、教訓だけを1行ずつ。長くなったら整理する(上の「限界」の表)。
5. 部品を、もう一段くわしく
① 指示書:短く、判断を書く
- 毎回読み込まれるので、長いほど損をする(目安は200行以内。くわしくは上の「4. mdファイル」)。コストがかかるうえ、肝心のルールが埋もれる(長い文章の真ん中は、見落とされやすいことが研究で知られている)。
- 書くこと:目的/置き場所/やってはいけないこと/言葉づかい/「ここを見れば分かる」という場所。書かないこと:フォルダ一覧の丸写しなど、ファイルを見れば分かること(すぐ古くなって嘘になる)。
- 置き場所=効く範囲:全員共通のルールは全体用に、案件ごとのルールは案件のフォルダに。詳しい規則は別ファイルに置き、指示書にはそこへの案内だけ書く(真実源を1か所にする)。
- 矛盾する指示を同居させない:「記録を必ず残す」と「メモは書かない」が両方あると、AIは迷う。
- 一律の禁止より、判断の軸:Anthropicは2026年7月、最新のモデルは「周囲に合わせて」と判断を渡すほうが、細かい一律ルールで縛るより良く働く、と整理している。
- 秘密(パスワード・鍵)は絶対に書かない。指示書はコピーされ、チャットにも読み込まれる。
② スキル:必要なときだけ呼ぶ手順書
- 指示書は「常に読まれる」、スキルは「呼んだときだけ読まれる」。手順は、指示書ではなくスキルに入れると、軽く保てる(段階的に開く、という考え方)。
- スキルの中身は、F1の手順書の5項目(出来上がり・材料・手順・人が確認するところ・例外と目安)。
- 置き場所で効く範囲が決まる。どのフォルダからでも使うなら全体用、その案件だけなら案件のフォルダ。
③ 権限:必要な分だけ、渡す
鍵は仕事に必要な最小限だけ渡す。「念のため全部」は事故のもと。
| 区分 | 考え方 | 例 |
|---|---|---|
| 自由にしてよい | 読むだけ、元に戻せる、社内で完結 | 資料を読む、下書きファイルを作る |
| 確認してから | 元に戻しにくい、または外に影響する | 既存ファイルの上書き、決まった手順以外のコマンド |
| させない(できなくする) | 事故になる、取り返しがつかない | メール送信・公開・削除・支払い、本番データの書き換え |
④ 関所:ルールを「どこに置くか」はリスクで決める
ここが一番大事。指示書に「やらないでね」と書くだけでは足りない。AIは確率で動くので、ルールを「ほぼ」守るが、「必ず」ではない。長い文章の中で忘れる、外から紛れ込んだ文章に上書きされる、解釈を間違える、という理由がある。
| 破られたときの影響 | ルールを置く場所 | 例 |
|---|---|---|
| 致命的でない | 指示書(お願い) | 文体、言葉づかい |
| 業務が回らなくなる | スキル(手順として組み込む) | 請求書チェックの手順 |
| 事故になる | 関所・権限(AIの外側で、できなくする) | 個人情報の外部送信、メールの自動送信、ファイルの削除 |
ウェブの世界で、入力チェックを画面側だけでなく、サーバー側でも行うのと同じ考え方。AIが何を考えていても、外側の仕組みが止める。事故になる種類は、「お願い」ではなく仕組みで止める。
⑤ 記憶:4種類を使い分ける
プリンストン大学の研究者が提案した整理(CoALA)では、AIエージェントの記憶は4種類。
| 種類 | 役割 | Claude での実体 |
|---|---|---|
| 作業中の記憶 | 今この瞬間の作業(会話・直近のデータ)。セッションが終わると消える | 会話の中身 |
| 知っていること | 事実・規約・制約。常に読み込まれる | 指示書(CLAUDE.md) |
| やり方 | 実行手順。必要なときだけ呼ばれる | スキル |
| 経験 | 過去のやりとり・決定・結果から得た教訓 | メモリ、決定ログ |
- 経験は「蒸留」して残す:生のやりとり全部ではなく、教訓だけを残す(例:45分の会話ではなく、「作業を始める前に、必ず対象の環境を確認する」の1行)。
- 忘れる仕組みも要る:状況が変われば、古い教訓は捨てる。何を捨てるかが、使い勝手の質を決める。
- 記憶は、置き場所で効く範囲が決まる:案件ごとの記憶は、その案件を開いたときだけ載る。全部の案件に効かせたいことは、全体用の指示書へ昇格させる。
⑥ 点検:1回で終わらせず、回し続ける
| 型 | 起動 | 止まり方 | 向く仕事 |
|---|---|---|---|
| 対話型 | 人が頼むたび | 1往復ごとに人が判断 | 日常の相談・下書き |
| ゴール型 | 完了条件を決めて頼む | 条件を満たしたら止まる | 1つの作業を仕上げる |
| 時間型 | 毎週・毎日など、決めた時間 | 実行が終わったら止まる | 週次の点検、定期レポート |
| 自律型 | きっかけがあれば人の関与なしに起動 | AIの判断 | 最も自律的。関所の設計が最重要 |
- 点検は、未解決を翌週に持ち越す:指摘して終わりにせず、台帳(簡単なメモでよい)に残して、「先週の指摘は直ったか」を次の点検で確かめる。
- AIが直して、AIが確認して、人が見ない、という並びは避ける。自動で直した箇所は、次の点検で再検証する。
- 点検は、「新しく長持ちするものを作る」仕事ではなく、「調べて報告する」仕事に向く。
6. 「採点表」を持つ(評価)
動かして終わりではなく、「良い仕事」の基準を数字にして、測る。Microsoftのサティア・ナデラCEOは2026年6月、企業の「自分たちのAI」を、基盤モデル+ハーネス+自社専用の採点表(private eval)と説明した。一般的なAIの賢さの比較ではなく、自社の仕事で、何を価値とし、何を許されない失敗とするかを決めるもの。
| 例:問い合わせ返信の下書きAI | 目標の例 |
|---|---|
| 直さずにそのまま使えた割合 | 7割以上 |
| 事実と違うことを書いた件数 | ゼロ(1件でもルールを見直す) |
| 人の確認が必要な案件を、見逃さなかった割合 | ほぼ100% |
| 自社の言葉づかいに合っているか(人が5段階で評価) | 平均4以上 |
モデルを乗り換えても、この採点表で良い結果が出続けるなら、主導権は自社にある。特定のAIに依存しないと成果が出ないなら、主導権は提供会社側にある。事故になる種類は、測って減点するより、④の関所で止める。
7. 事故から生まれたルール(講師の実例)
ハーネスは机上で考えるより、小さな事故を1つずつルールに変えていくと強くなる。
| 起きたこと | ルールにしたこと | 部品 |
|---|---|---|
| AIを使うための鍵(APIキー)が公開の場所に出て、約6万8千円の不正請求 | 鍵はコードにもチャットにも書かない。鍵は専用の金庫に集め、プログラムは金庫から読む(→ E6) | ①③ |
| 鍵や秘密を確認しようとして、中身をそのまま表示させてしまい、会話の記録に残った | 秘密の中身は表示しない。確認は「存在するか」だけ。試験用の使い捨てを使う。漏れたら、すぐ入れ替える | ③④ |
| AIが「不要」と判断した経理書類を消してしまった | AIの判断で消さない。疑わしいものは「退避フォルダ」へ移し、最後は人が消す | ③④ |
| クライアントのブログを、確認前に公開しかけた | 公開ボタンはクライアント本人が押す。AIは下書きまで | ④ |
| AIが古い知識で製品名を「訂正」して間違えた | 製品名・料金は、直す前に必ずWebで確認する | ①⑤ |
| 同じ説明を何度もさせられた | 一度決めたことは記憶に残し、蒸し返さない | ⑤ |
8. 作り方の手順
小さく始める1週間
| 日 | やること |
|---|---|
| 1日目 | 仕事を1つ選ぶ。何が出来上がればよいか、1行で書く |
| 2日目 | 指示書を1枚書く(上の例を参考に)。禁止事項は3つまで |
| 3日目 | 関所を決める。送信・公開・削除・支払いのうち、この仕事に関わるものを書き出す |
| 4〜5日目 | 実際に頼んでみる。うまくいかなかった点を、指示書かスキルに1行ずつ足す |
| 6日目 | 手順をスキルにする(F1のステップ4・5) |
| 7日目 | 点検:事故やヒヤリとした点はなかったか。あればルールにする。なければ、翌週も同じ |
9. AIに仕事を任せる前の10の確認
| ☐ | 確認すること |
|---|---|
| ☐ | 目的と、出来上がりの形が、1行で書けている |
| ☐ | 使う資料の置き場所と、最新かどうかの見分け方が決まっている(B2) |
| ☐ | 入れてよい情報・いけない情報が決まっている(D1) |
| ☐ | 渡す権限が、仕事に必要な最小限になっている |
| ☐ | 送信・公開・削除・支払いは、人が押す関所になっている |
| ☐ | 鍵・パスワードが、指示書にもチャットにも書かれていない |
| ☐ | 間違えたとき、元に戻せる(退避フォルダ・履歴) |
| ☐ | 何をしたかの記録が残る |
| ☐ | 最終的な責任者が、1人決まっている |
| ☐ | 点検の頻度と担当が決まっている |
10. よくある失敗
指示書が長大になる
全部書こうとして、肝心のルールが埋もれる。短く、案内だけにする。
ルールが矛盾している
追記を重ねて、前の指示と食い違う。点検のときに読み直す。
権限が広すぎる
「念のため全部」を渡す。便利さと事故は同じ入口から来る。
お願いで済ませる
事故になる種類を、「やらないでね」と書いて終わりにする。仕組みで止める。
記憶が増えるだけ
古い教訓を捨てない。状況が変われば、捨てる・直す。
点検しない
作って満足し、半年後にルールと実態がずれている。週1回、短くてよい。
AIエージェントが自分で動くようになるほど、「権限のはみ出し」が起きやすくなる。便利さと事故は同じ入口から来る。最初に決めるのは「何をさせるか」ではなく「どこで止めるか」。
関連資料
- F1 業務の棚卸しと仕組み化 … 手順書の書き方(スキルの材料)
- E1 はじめてのAIエージェント:フォルダ構成と管理 … セットで使う。置き場所と進め方、最初の30分の手順
- E4 Gitの導入と設定 … 変更履歴という「保存の金庫」。ターミナルなしで進められる
- E5 SupabaseとCloudflare … 作ったものの置き場所。RLSと無料枠
- E6 APIキー(秘密)の扱い … .env に頼らず、Vault に置く
- E7 VPSサーバー … 自分のサーバーに、Webアプリを設置するとき
- E3 ローカルLLMと「情報を外に出さない」設計
- C3 事例:この資料ライブラリの自動化・スキル化 … ハーネスの実物
- D1 信号機ルール
出典(2026年10月確認)
- GPU数から「トークン経済性」へ Dellが示したAIインフラ競争の新基準(AI新聞・2026年5月20日):NVIDIAのハーネスの定義
- チャットボットを「自律型AI」に変える鍵、『4つの記憶とガードレール』(ITmedia・2026年5月):記憶4種(CoALA)、ガードレール、ルールを置く場所
- Claude 5世代のコンテキストエンジニアリング(@IT・Anthropic原文の解説):指示書は軽く、判断を渡す、手順は段階的に
- 「最強モデル」はもう無意味 ナデラCEOが語る「学習ループ」(@IT・2026年6月)
- 全ての企業が「自分たちのAI」を構築する時代=Microsoftのサティア・ナデラ氏(AI新聞・2026年6月5日):モデル+ハーネス+自社専用の採点表
- Claude Code 公式ドキュメント:メモリ(CLAUDE.md・自動メモリ):200行、25KB、4MiB、@importの4段、置き場所と読み込み順(2026年10月3日確認)
- Claude Code 公式ドキュメント:スキル(SKILL.md):500行、説明文1,536文字