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E2Claude Code

ハーネスエンジニアリング入門

考え方と6つの部品(E1のあとに読む)。mdファイル(指示書・メモリ・スキル)の使い方と行数の限界、ルールを置く場所の決め方、採点表、事故から生まれたルール、10の確認

更新日:2026-10-03(2026年10月時点の情報)|HUMAC 伊藤晴通

対象ツール:Claude Code考え方は、どのAIエージェントにも共通です。ただし、ファイル名・画面・設定・コマンドは、Claude Code(Claudeのデスクトップアプリの「Code」タブ)の場合です。ほかのAIエージェントでは、読み替えが必要です。対象の方:開発者ではない方(経営者・事務・現場の担当者)。プログラミングは不要です。コードは書かず、AIエージェントに頼んで、自分の業務アプリをつくるところまでを、順に進めます(ターミナルの黒い画面は、使わない形で書いています)。
先に E1(フォルダの作り方)で、手を動かすと、読みやすい

このページは「考え方」(なぜ・何を)。E1で、仕事のフォルダ・指示書・現在地を、実際に作ってから読むと、各部品が、自分のフォルダのどこにあたるか、すぐ分かる。

ハーネスとは「馬具」のこと

AIエージェントは力の強い馬。放っておくと、頼んでいない相手にメールを送ったり、消してはいけないファイルを消したりする。手綱と装具(ハーネス)を付けて、決めた道を安全に走らせる仕組みづくりが「ハーネスエンジニアリング」。AIを賢くするより、AIが間違えても事故にならない形を作ることが仕事の中心になる。

1. まず1枚の絵:エンジンと車体

AIモデル=エンジン

ChatGPT・Gemini・Claude の「頭脳」にあたる部分。とても高性能だが、エンジンだけでは走れない。

ハーネス=車体まわり一式

ハンドル・ブレーキ・ナビ・シートベルト。エンジンを「目的地まで安全に走れる車」にする仕組み。私たちが普段さわっているのは、実はこちら。

NVIDIAのジェンスン・フアンCEOは2026年5月、エージェントは言語モデルの上で直接動くのではなく、その手前に挟まる「安全に管理されたソフトウェア層」の上で動くと説明した。この層が担うのは、考えて道具を使う手順の繰り返し、外部システムの呼び出し、モデルの使い分け、記憶と文脈の管理、そして暴走の停止や行動の記録。

「賢いAI」と「使えるAI」は別物

質問して答えをもらうだけなら、ハーネスは薄くてよい。しかし「AIが自分でメールを送る・データを更新する・複数のシステムをまたいで作業する」ようになると、何を許すか・どこで止めるか・何を記録するかの設計が要る。同じモデルでも、ハーネスの出来で「使い物になるか」が決まる。

2. なぜ今、大事なのか

3. ハーネスの6つの部品

部品たとえ中身Claude での実体これが無いと
① 指示書新人に渡す「職場のルールブック」この仕事の目的、置き場所、やってはいけないこと、言葉づかいプロジェクトごとの CLAUDE.md毎回、同じ説明をする。人によって結果が違う
② スキル業務ごとの手順書「この仕事はこの順で、この資料を見て、この形で仕上げる」スキル(合言葉で呼び出す)毎回ゼロから頼む。品質がばらつく
③ 権限渡す鍵の範囲読んでよい場所・書いてよい場所・使ってよい道具許可設定(ファイル・コマンド・外部サービスごと)触ってはいけないものに触れてしまう
④ 関所(承認)判子が要る書類送信・公開・削除・支払いの前は、必ず人が確認する承認の確認画面、フック(自動チェック)取り返しのつかない操作が、人の知らないうちに実行される
⑤ 記憶引き継ぎノート前回の失敗・決まったこと・好みを次回に持ち越すメモリ、決定ログ、STATUS同じ失敗と説明を、何度も繰り返す
⑥ 点検定期監査ルールと実態がずれていないか、定期的に確かめる週次の自動点検(定期実行)ルールが古くなり、いつの間にか守られなくなる
6つの部品は、フォルダの中のどこに置くか

① 指示書=CLAUDE.md/② スキル=.claude/skills//③ 権限=.claude/settings.jsonとフォルダの範囲/④ 関所=承認の設定と、書き込み先(outputs/)・退避(_archive/)/⑤ 記憶=STATUS.mdと決定ログ.md/⑥ 点検=RAID.mdと週1回の点検。実際の作り方と進め方は E1 はじめてのAIエージェント:フォルダ構成と管理。

4. mdファイル:ハーネスの本体は「文章」

Claude Code のハーネスは、プログラムではなく、人が読める普通の文章ファイル(Markdown=「.md」)で作る部分が大きい。AIは会話のたびに「白紙」から始まるので、前回の学びと、守ってほしいルールを持ち越す手段は、mdファイルしかない。ここを理解すると、プログラムが書けなくても、AIの振る舞いを設計できる。

4-1 3種類のmdファイルと、それぞれの役割

ファイル誰が書くいつ読まれる一言でいうと
CLAUDE.md(指示書)人セッションの開始時に、毎回「このルールで働け」
メモリ(MEMORY.md + 個別のメモ)Claude が自分で書く目次(MEMORY.md)は毎回。個別のメモは必要になったとき「前に教わったこと」
SKILL.md(スキル)人(Claude と一緒に作ってもよい)呼んだとき、または必要と判断されたとき「この仕事のやり方」
mdは「お願い」であって、「強制」ではない

CLAUDE.md は、Claude に渡される文脈で、設定のように強制されるものではない。曖昧な指示や、食い違う指示は、守られないことがある。必ず守らせたいこと(送信・削除・公開の前の確認など)は、md に書くだけでなく、権限の設定やフック(決まった場面で自動で動くチェック)で、仕組みとして止める(→ ④関所)。

4-2 置き場所=効く範囲

置き場所効く範囲向く内容
組織の管理者が置く場所(OSごとに決まった場所)その組織のすべての利用者会社の規程、セキュリティの方針
~/.claude/CLAUDE.md自分の全セッション言語、秘密情報のルール、共通の作法
案件のフォルダ/CLAUDE.md(または .claude/CLAUDE.md)その案件のセッション。共有できる案件の目的、置き場所、ルール、依頼例
CLAUDE.local.mdその案件・自分だけ(共有しない)個人の作業メモ
サブフォルダの CLAUDE.mdそのフォルダのファイルを読んだときだけ部分的なルール
.claude/rules/ のmdパスを指定すると、該当するファイルのときだけ。指定なしは毎回テーマごとに分けたルール

4-3 行数・サイズの限界(2026年10月時点・公式の数字)

対象限界・目安超えるとどうなるか
CLAUDE.md(1ファイル)200行以内が目安。それより長くしない文脈を多く使い、守られにくくなる。長いと、起動時などに警告が出る。4MiBを超えると、そもそも読み込まれない
メモリの目次(MEMORY.md)起動時に読まれるのは、先頭200行、または25KBの、先に来たほうまでそれ以降は読み込まれない(書き込み自体はできる)。1記憶1行、詳細は個別のメモに分ける
メモリの個別ファイル起動時には読まれない必要になったとき、Claude が読みに行く
SKILL.md(本体)500行以内が目安。詳細は別ファイルへ呼ぶたびに全部が文脈に載るので、長いほど毎回のコストが増える
スキルの説明文(description)説明文+使う場面の合計で1,536文字まで(一覧に載る分)それ以降は一覧で切れる。「いつ使うか」を先頭に書く
@で読み込む別ファイル(import)入れ子は最大4段まで整理には役立つが、読み込む量は減らない(起動時にすべて読む)
.claude/rules/(パス指定なし)起動時に毎回読まれる(CLAUDE.md と同じ扱い)長くしたくなったら、パス指定で「該当するファイルのときだけ」にする

行数の限界は「機械的に切られる線」ではなく、「長いほど守られにくい」という目安(CLAUDE.md)と、「それ以降は読まれない」という線(メモリの目次)の2種類がある。長い文章の中ほどが見落とされやすいことは、研究でも知られている(→ ①)。

4-4 使い方の原則

曖昧な書き方確かめられる書き方
丁寧な文章で「です・ます調」で、1文は60字以内
資料は整理して置く見積書は「営業/見積書」に、ファイル名は「会社名_日付_v番号」で保存する
メールは気をつけてメールは下書きまで。送信はしない

4-5 長くなったときの直し方(優先順位)

1 自明なことを消すファイルを見れば分かること、古くなった情報
2 手順はスキルへ複数のステップは、呼んだときだけ読まれるスキルに
3 場所で分けるその案件だけ、そのフォルダだけのルールは、近くのファイルへ
4 詳細は別ファイル+案内だけ本体には「詳しくはここ」だけ書く(※@で取り込むと、量は減らない)
(行数の点検:ターミナルは使わず、Claudeに頼む) このフォルダの CLAUDE.md と、全体用の CLAUDE.md の行数を数えて、200行を超えていないか教えてください。メモリの目次(MEMORY.md)も、行数とサイズ(KB)を教えてください。

4-6 確認のしかた:コマンドより、Claudeへの頼み方

ターミナルが苦手でも大丈夫。やりたいことを、そのままClaudeに頼めばよい。コマンド(右の列)は、慣れた人向けの参考で、デスクトップアプリでは、使えないものもある。

やりたいことClaudeへの頼み方(参考)コマンド
読み込まれている指示書・メモリの確認。「書いたのに効かない」ときは、まずこれ「いま読み込んでいる指示書とメモリを、ファイル名と行数で一覧にして」/context、/memory
指示書のひな形を作る「この仕事の CLAUDE.md を作って。書く前に、私に質問して」(コードの無い案件は、先に議論してから作るほうがよい)/init
指示書の点検「CLAUDE.md を点検して。長すぎる所、古い所、食い違いを報告して。直す前に確認して」/doctor
覚えさせたいことを、ファイルに残す「これを CLAUDE.md に追記して」(自動メモリに残したいときは「覚えておいて」)/memory
講師の実例
  • 全体用の CLAUDE.md は約70行、案件用は約40行。毎回読まれるものは、短く保つ。
  • 詳しいルールは別ファイル(真実源)に置き、指示書には「どこを見るか」だけを書く。
  • スキルの一覧は指示書に書かない。各スキルの説明文が自動で読まれるので、二重管理を避ける。
  • メモリには、教訓だけを1行ずつ。長くなったら整理する(上の「限界」の表)。

5. 部品を、もう一段くわしく

① 指示書:短く、判断を書く

【この仕事の目的】お客様への見積案内メールの下書きを作る 【置き場所】見積書の雛形は「営業/見積書の雛形」。過去の案内文は「営業/案内文」 【言葉づかい】丁寧語。「させていただく」は使いすぎない 【やってはいけないこと】 ・送信しない(下書きまで) ・お客様の個人情報を、AIに入力する文章に含めない ・金額は、見積書の数字を写す(計算し直さない) 【迷ったら】作らずに、私に質問する

② スキル:必要なときだけ呼ぶ手順書

③ 権限:必要な分だけ、渡す

鍵は仕事に必要な最小限だけ渡す。「念のため全部」は事故のもと。

区分考え方例
自由にしてよい読むだけ、元に戻せる、社内で完結資料を読む、下書きファイルを作る
確認してから元に戻しにくい、または外に影響する既存ファイルの上書き、決まった手順以外のコマンド
させない(できなくする)事故になる、取り返しがつかないメール送信・公開・削除・支払い、本番データの書き換え

④ 関所:ルールを「どこに置くか」はリスクで決める

ここが一番大事。指示書に「やらないでね」と書くだけでは足りない。AIは確率で動くので、ルールを「ほぼ」守るが、「必ず」ではない。長い文章の中で忘れる、外から紛れ込んだ文章に上書きされる、解釈を間違える、という理由がある。

破られたときの影響ルールを置く場所例
致命的でない指示書(お願い)文体、言葉づかい
業務が回らなくなるスキル(手順として組み込む)請求書チェックの手順
事故になる関所・権限(AIの外側で、できなくする)個人情報の外部送信、メールの自動送信、ファイルの削除
原則:「信頼して検証する」ではなく、「できないようにする」

ウェブの世界で、入力チェックを画面側だけでなく、サーバー側でも行うのと同じ考え方。AIが何を考えていても、外側の仕組みが止める。事故になる種類は、「お願い」ではなく仕組みで止める。

⑤ 記憶:4種類を使い分ける

プリンストン大学の研究者が提案した整理(CoALA)では、AIエージェントの記憶は4種類。

種類役割Claude での実体
作業中の記憶今この瞬間の作業(会話・直近のデータ)。セッションが終わると消える会話の中身
知っていること事実・規約・制約。常に読み込まれる指示書(CLAUDE.md)
やり方実行手順。必要なときだけ呼ばれるスキル
経験過去のやりとり・決定・結果から得た教訓メモリ、決定ログ

⑥ 点検:1回で終わらせず、回し続ける

型起動止まり方向く仕事
対話型人が頼むたび1往復ごとに人が判断日常の相談・下書き
ゴール型完了条件を決めて頼む条件を満たしたら止まる1つの作業を仕上げる
時間型毎週・毎日など、決めた時間実行が終わったら止まる週次の点検、定期レポート
自律型きっかけがあれば人の関与なしに起動AIの判断最も自律的。関所の設計が最重要

6. 「採点表」を持つ(評価)

動かして終わりではなく、「良い仕事」の基準を数字にして、測る。Microsoftのサティア・ナデラCEOは2026年6月、企業の「自分たちのAI」を、基盤モデル+ハーネス+自社専用の採点表(private eval)と説明した。一般的なAIの賢さの比較ではなく、自社の仕事で、何を価値とし、何を許されない失敗とするかを決めるもの。

例:問い合わせ返信の下書きAI目標の例
直さずにそのまま使えた割合7割以上
事実と違うことを書いた件数ゼロ(1件でもルールを見直す)
人の確認が必要な案件を、見逃さなかった割合ほぼ100%
自社の言葉づかいに合っているか(人が5段階で評価)平均4以上

モデルを乗り換えても、この採点表で良い結果が出続けるなら、主導権は自社にある。特定のAIに依存しないと成果が出ないなら、主導権は提供会社側にある。事故になる種類は、測って減点するより、④の関所で止める。

7. 事故から生まれたルール(講師の実例)

ハーネスは机上で考えるより、小さな事故を1つずつルールに変えていくと強くなる。

起きたことルールにしたこと部品
AIを使うための鍵(APIキー)が公開の場所に出て、約6万8千円の不正請求鍵はコードにもチャットにも書かない。鍵は専用の金庫に集め、プログラムは金庫から読む(→ E6)①③
鍵や秘密を確認しようとして、中身をそのまま表示させてしまい、会話の記録に残った秘密の中身は表示しない。確認は「存在するか」だけ。試験用の使い捨てを使う。漏れたら、すぐ入れ替える③④
AIが「不要」と判断した経理書類を消してしまったAIの判断で消さない。疑わしいものは「退避フォルダ」へ移し、最後は人が消す③④
クライアントのブログを、確認前に公開しかけた公開ボタンはクライアント本人が押す。AIは下書きまで④
AIが古い知識で製品名を「訂正」して間違えた製品名・料金は、直す前に必ずWebで確認する①⑤
同じ説明を何度もさせられた一度決めたことは記憶に残し、蒸し返さない⑤

8. 作り方の手順

仕事を1つ選ぶ毎回同じ手順で、失敗しても取り返しがつくもの
指示書を書く目的・置き場所・禁止事項を1枚に。長くしない
関所を決める「外に出る操作」と「消す操作」は必ず人が押す
スキルにする手順を言葉にし、合言葉で呼べるようにする
点検を回す週1回、ルールと実態のずれを確かめ、事故はルールに変える

小さく始める1週間

日やること
1日目仕事を1つ選ぶ。何が出来上がればよいか、1行で書く
2日目指示書を1枚書く(上の例を参考に)。禁止事項は3つまで
3日目関所を決める。送信・公開・削除・支払いのうち、この仕事に関わるものを書き出す
4〜5日目実際に頼んでみる。うまくいかなかった点を、指示書かスキルに1行ずつ足す
6日目手順をスキルにする(F1のステップ4・5)
7日目点検:事故やヒヤリとした点はなかったか。あればルールにする。なければ、翌週も同じ

9. AIに仕事を任せる前の10の確認

☐確認すること
☐目的と、出来上がりの形が、1行で書けている
☐使う資料の置き場所と、最新かどうかの見分け方が決まっている(B2)
☐入れてよい情報・いけない情報が決まっている(D1)
☐渡す権限が、仕事に必要な最小限になっている
☐送信・公開・削除・支払いは、人が押す関所になっている
☐鍵・パスワードが、指示書にもチャットにも書かれていない
☐間違えたとき、元に戻せる(退避フォルダ・履歴)
☐何をしたかの記録が残る
☐最終的な責任者が、1人決まっている
☐点検の頻度と担当が決まっている

10. よくある失敗

指示書が長大になる

全部書こうとして、肝心のルールが埋もれる。短く、案内だけにする。

ルールが矛盾している

追記を重ねて、前の指示と食い違う。点検のときに読み直す。

権限が広すぎる

「念のため全部」を渡す。便利さと事故は同じ入口から来る。

お願いで済ませる

事故になる種類を、「やらないでね」と書いて終わりにする。仕組みで止める。

記憶が増えるだけ

古い教訓を捨てない。状況が変われば、捨てる・直す。

点検しない

作って満足し、半年後にルールと実態がずれている。週1回、短くてよい。

任せるほど、関所が大事になる

AIエージェントが自分で動くようになるほど、「権限のはみ出し」が起きやすくなる。便利さと事故は同じ入口から来る。最初に決めるのは「何をさせるか」ではなく「どこで止めるか」。

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